なにが「と言うわけで」だ

・なんかこう、バタバタしているうちにあっという間に11月になり、仕事も活況どころかちっとも嬉しくない悲鳴が上がるレベルの迷走っぷりをしているわけであるが、そんな最中でもPS3アイマス2は発売になり、我が家には当然のように初回限定版BOXが開封のまま転がっており、気が付けば私のメインコンソールであるところのPC机のリアルデスクトップにはPS3本体と、PS3HDMIからIntensity Proでごにょごにょする機械が鎮座在していやがる。あ、キャプれました、はい。

・まぁ、そんなわけでなんでそんな慌ててPS3を購入するハメになったのか、と言うのも、S4Uの機能強化と言うか「なんで箱◯でできなかったのこれ!?」と言う機能が実装されたと言うからだ。そう、「歌詞テロップ消し」である。実際、どこまでできるのかまだこの目で見たわけではないから、今すぐどうこうと言うことでもないし、nukim@s-3を使いたくても屋外ステージを揃えるためにはゲームを何周かする必要が出てくる。今すぐにどうこうとは、なかなかいかない。いずれにしても開けたら最後確実に一周するまで寝ないので、土曜の夜とかに開封なのではないだろうか。

・そんなわけで「青春m@ster2」のほうも評価ステージが終わって、ようやく本公開が明日からと言うことで、先日中間ラジオも無事終わり(毎度毎度、私は無難なコメントとツッコミに終始している気がしてならんが)俺ん中ではほぼ一段落したところで、SS書きたい欲もすっかり減退している代わりに動画作りたい欲はモーレツな勢いで上昇している。もはや仕事より一生懸命かも知れないくらいの勢いなのだが、だからと言って素材撮ったり切ったり貼ったりをしているのかと言うと全くしていない。紗水さんはとうとう頭がおかしくなったらしく、「動画を作るツールを作る」ところから始めたのである。何やってんだお前、と言われそうだが、まぁその理由はいずれわかるだろう。とにかく何年かぶりにC言語とアセンブラと言うすっげー原始的なプログラミング環境で日々苦戦している最中である。

・そんな中で、ふとあることに気付いた。最近、*.tar.xzと言うサフィックスを目にすることが増えたからである。すっかりUn*x界隈とは縁遠くなってしまったので、最近のトレンドがいつの間にbz2から変わったのかと多いに驚いたので、当然の如く調べた。その辺は一介の技術者である以上速攻である。で、今のところいわゆる「リファレンス実装」と呼ばれているLZMA SDK7-zipのサブセット)の中にある「LZMAUtil」を、とりあえずVC++9でビルドしてみた。dswが付いてきたからと言う安直な理由で。んでもってビルドはあっさり完了。出来上がった7lzma.exeにに、RGB24で1,280×720のBMP(RLEなし)をぶち込んで圧縮させてみた。

 圧縮前:2,764,854バイト → 圧縮後:1,693,874バイト 圧縮率:約61.3%

 BMPファイルの方にはBMPのヘッダが含まれるが、屁みたいなもんなのでほっとくとしても、これは確かになかなかの数字ではある。もっともLZMALibに含まれるエンコーダ/デコーダはある意味「リファレンス実装」としての側面が強いと言うのもあるが、もっといろいろパラメータをいじることもできるし、そもそも用意するBMPによっても大きく変わってくるであろうし、もう少し実験を繰り返す必要は有るとしてもだ。

 この圧縮を、わずか0.67秒前後で叩き出すのだ(注:紗水家のメインPCはcore-i7 860を積んでいる)

・……な? ちょっと夢が広がりんぐな気がしないか? 正直まだ、そのサイズのBMPを圧縮完了するのに0.67秒「も」かかるようではアレだとしても、これをもっとカツカツにチューン出来たら可逆圧縮コーデックとして応用可能な気がする。正直、リファレンス実装はまだたぶん、こなれていないはずなのだ。

と言うわけで(←注:タイトルのツッコミはここに掛かる)、LZMA法による可逆圧縮コーデックの可能性を見たところで、本日のチラ裏はおしまいである。つーかもうどっかに実装転がってそーだけど。

5分で学ぶ! 初心者向け動画編集フリーウェア

前の会社の後輩が「ちょっと真剣に動画作ってみようと思ってるんですけど、正直何からどうすれば良いかわかんないんです」とメールしてきたのをきっかけに、主に国産であるもの、または海外発祥だが国内においてもドキュメントの充実しているものをピックアップして、各フリーウェアごとのあらましを書いておくことした。なので、もう動画作ってるもん、と言う方はもうとっくに存じ上げている話である。まさにチラ裏。

■ AviUtl + exedit

 元々AviUtlはわりと昔から動画編集ツールとしてその名を知られていたが、そもそもAviUtlは「一本のAVIファイルを編集加工する」ことを目的として作られたツールであったため、タイムラインと言う概念が存在しなかった。編集対象となるAVIが全てだったのである。

 これはAviSynthにも同じ事が言えるため、相互乗り入れをするようなプラグインが双方に存在する。ゆえにAviUtlは「気軽にAviSynthを使う」ためのフロントエンドとしての機能も有していたと言うことができる。なにせAviSynthはフロントエンドと言う概念が異常なほどに乏しいことも有り、またAviUtlそのものが国産のフリーウェアであることも手伝い、国内では「フリーの動画編集と言えばAviUtl」と言うのは比較的共通言語化していたことも事実である。

 だが、AviUtlはある一点より確実に「進化」を遂げた。「拡張編集プラグイン」と言う新たな動画編集概念を引っ提げて、強烈なパワーアップを計ったのである。

 現状の拡張編集プラグイン(以下、プラグインのファイル名を取ってexeditと呼ぶ)は最大で100枚のレイヤーを保持し、また画像平面を3D空間に配置することを可能としている。3D空間がある以上「カメラ」の概念が存在し、またライトレイヤーも実装されているなど、ほぼ一通りのことはもう、exeditで実現できてしまう。

 その上、動作の安定性は本線で動画ファイルを扱っているエンジンはこれまでも非常に堅牢に作られており、非常に安定していることも知られている。各レイヤに設置した動画に対して、個別にエフェクトを掛けることもでき、任意のレイヤをグループ化して同時にカメラ1個で視点変更を可能にすることも難しくない。

 その上、これまでAviUtl用として制作されたフィルタプラグインも適用可能である。ただ、exeditでは設定できないフィルタも有るが、そのようなフィルタは本体側から掛けてやれば良い。その程度の仕様制限は有るものの、まず「動画編集」と言う側面を練習したい、学びたいとする向きには打って付けの環境である。そして、単に初心者向けには留まらない、幅広い応用を持っていることも、AviUtl+exeditの特徴であろう。

 だが、一つ勘違いしてはいけないことがある。
 それは、exeditはあくまで「プラグイン」である、と言うことだ。

 まずレイヤが最大100枚と言うのは、完全に仕様制限である。もっとも、100枚のレイヤが同時にタイムライン上に走る、と言うのはあまり好ましい編集の仕方ではないとしても、一応そういう制約は存在すると言う点には注意が必要である。

 それと、レイヤに掛けるエフェクトは、実はexeditと言うプラグインが全てバイナリコードとして内包する形で実装されている。これは、exeditがプラグインと言う実装形態を取っている以上、致し方ない問題であった。それでも、現状存在するエフェクトは充分な数が揃っており、これ以上のものを望むのであれば自力でプラグインを書くか、Luaスクリプトによる拡張をユーザが自ら行える仕組みを導入しているので、その気になれば既存エフェクトの重ね掛けや、新しいエフェクトの導入なども可能にはなる。但しLuaプログラムを書く必要があると言う点には、特にプログラミングに習熟していないユーザには注意が必要である。プラグインはもっと大変(C++とWin32についての知識が要る)なので、当初はあまり考えなくても良いだろう。

 ただ、Luaスクリプトを書くことによって得られるのは、飛躍的な表現の広がりと言うよりもどちらかと言うと「いちいちぽちぽち中間点を打って、その度にちまちまと設定ダイアログから設定を繰り返す」と言う手間の削減の意味合いが強いように思う。ただ、プリセットスクリプト(exedit.scnにある)だけでもかなり表現の幅は広がるだろう。特にscenechangeスクリプトを活用することで、様々なトランジション表現を可能にしていることは、やはり特筆に値する。

 ではここからは「難癖」の世界であることを、予めご承知おき頂きたいと思う。

 3D描画は実装されているが、現状奥行き関係などを考えると「精度的に弱い」。これは作者様ご自身もおっしゃっていることだが、ポリゴン精度は決して高くないため、オリジナルステージの構築などと言う問題になると途端に話が変わってくる。さらに、描画にDirectXを使っている関係上、テクスチャの質感として「べたっとした画面」になってしまう。AviUtlかAE/NiVE2/Javieかを区別する時、前者と後者群の大きな違いは、この3Dレンダリングエンジンに何が用いられているか、と言う問題がある。
 DirectXはそもそもゲーム用に開発されたライブラリ群であり、非常に低レベルな――コンピュータに明るくない方は誤解されるかも知れないが、コンピュータプログラミングにおける「低レベル」とは「よりハードウェアに近い」と言う意味である――難しい処理を包括するためのライブラリである。もっとも、包括されたところであんだけ引数まみれのメソッドを要求する時点で「ちっとも高レベルじゃない!」と言うところはあるが。
 まぁ、兎にも角にも、exeditが使っている3Dライブラリはほぼ確実にDirectXだ。そして、元々読み込んでいる動画・画像の質感がベタッとしていると、ほぼその通り再現するため、何となく違和感を覚えるのである。
 もっともこれがOpenGLになると話が変わるのか、と言うと話は別だ。おそらくOpenGLレンダリングしたってテクスチャがベタッとしていれば必然的にベタッとする。そういったことも考慮に入れ、画面の「質感」を考慮する際には、この3Dレンダラの違いと言う部分を頭の片隅に入れておくことが肝要である。

 もう一つ、これは結構面倒だ。これはAviUtlの仕様なのかも知れないが、再生速度を早める指定を実現しようとすると、当然幾らかのフレームは間引かれることになるが、間引いた分の描画フレームは「どっかに行っちゃったまま」になる。

 NiVE2やJavieと言ったAEを意識して作られている動画加工ツールは、こうした再生速度の変更――専門用語で「デュレーション」と言う。今後はそう呼ぶ――に対応するためにフレームブレンドを行う、あるいはモーションブラーを掛けると言った「間引かれたフレームの補完」と言う作用を与えることが出来るのだが、AviUtlは本体にその機能を内包していない。

 ではAviUtlはフレームブレンドやモーションブラーが出来ないのか? と言うと、そういうことではない。まずモーションブラーはexeditがデフォルトで持っている。フレームブレンドはエフェクトとしては存在しないが、先ほど申し上げたとおりLuaスクリプトによって充分表現可能だ。ただし、手元で試している範囲では壮絶に重いのも現実である。Luaスクリプト言語であると言う壁がそこに立ち塞がっている、と言う言い方も出来ようか。もっとも、アルゴリズム次第でもっと軽く作れるのだろうが、フレーム補完が必要な場面になったら別のツールを使っているので、ここでは触れない。ごめん。

 一応「フレーム補完」について触れておく必要はあるだろうか。

「フレーム補完」と言う処理は前述した通り、デュレーションの変更により欠損した描画フレームを何らかの手段によって補完し、間引かれたフレームの前後の描画をより滑らかな動きにするための手段である。

 例えば、元々の素材として60fps.でキャプチャした動画を30fps.に落としたい、と考える。なぜなら、60fps.の描画を要求するよりも、30fps.のほうが処理が軽いからだ。ではそれを「えいやっ」と間引くとどうなるか。これは、実際に動画を作って見てもらったほうが分かりやすいかも知れない。

 特に動きの激しい場面に於いて、明らかに30fps.側は「カクカクしている」。つまり、動きが不自然に見える。これは視聴する側にとってあまり気持ちの良いものではない。だからその「気持ちの良くない」動きを気持ち良く見せるために、フレーム補間と言う処理を挟んでやる必要が存在するのである。

 と、言った「難癖」は有るものの、正直ステージPVを作るならAviUtl+exeditと言う選択肢は今のところ最も手軽で最も器用で、最も高性能であると言える。余程重いフィルタを掛けたりしない限りはプレビューもかなり頑張って追従するし、そもそも本体が軽く出来ているため、ハードをそれほど選ばないと言う特質もある。そもそもフッテージさえ自由に設定できないPremire Elementsを使うことを考えたら、圧倒的にパフォーマンスに優れている。

■ NiVE(Nico Visual Effects)

 NiVEは現在既に開発は2系列が主体で、従前の1系列はバグフィックスに関するメンテナンスのみ行われている。そのため、本項ではNiVE2について触れていくこととしたい。

 NiVE2のコンセプトは、いわゆるAfter Effectsに代表されるようなモーショングラフィックスエディタとしての機能を目指している。もっともAEのオルタナティブを目指しているわけではなく、あくまでNiVEはNiVEであると言うスタンスだが、インタフェースは2系列になってかなり洗練された。もっとも、1系列との後方互換性を全く捨てたこともあり現在でもプラグインが豊富に公開されている1系列を使用しているユーザも多いのかも知れないが。

 と言うわけで、NiVEのコンセプトは「動画編集」ではない。編集された動画への「加工」を主目的としている。さらに言えば、動画素材のない状態から動画を作る、マテリアライザとしての役割も強い。もっとも、AEがほぼ単独で動画編集も出来るように、NiVEもまた動画編集が出来ないわけではない。ただ、単純に動画編集を行うのであれば、別のツールで予め組み上げて、中間出力に対してフィニッシングを行う、と言うつもりで考えておくべきであろう。NiVEも、後述するJavieも、そういう傾向のツールである。

 さて。NiVEもまた国産であり、Windows環境で動くことも手伝ってユーザはそれなりにいるが、間口こそ広いものの敷居はかなり高い。まず初心者にとっては「何をどうすれば何ができるのか」も見当がつかないだろう。ただ、マニュアルもちゃんと付いているし、細かい点については有志解説サイトも存在する。NiVEは発祥が「2ちゃんねる」であることもあり、比較的ユーザは多いはずであるが、まだまだこれからさらに発展の余地があるソフトウェアであることは間違いない。

 もっとも「加工」に特化したソフトである以上、一からすべてNiVEで、と言うのはどちらかと言うと作業効率は悪い。素材は揃った、あとはこのシーンなりこのカットなりの分を並べればOK、と言う状態に来て初めて威力を発揮するのが、こうした加工ツールの類なのである。

 AEを意識している部分が大きいので、当然3Dレイヤも有る。ライトレイヤも有る。ガベージマットだトラックマットだと言う、加工処理に欠かせない機能はざっとプリセットにて揃っている。ただ、初心者には「これは何をするときに使うものなの?」と言う部分が大きすぎるため、直観的に操作して何か出来ると言う類のソフトではない。これは別に、NiVEが悪いのではなく、モーショングラフィックスツールと言うものは「得てしてそういうもの」なのである。なので、複数コンポジションだヌルオブジェクトだなんだかんだと言う機能のメリットは、非常に伝えづらい。

 またNiVEの特徴は、AEを意識して作られているのであろうエクスプレッションと言う、キーフレームによらないプロパティ操作が可能であること、デフォルトで導入されているエフェクトが豊富であることなどが有る。さすがにプラグインを自作するとなるとかなりハードルは高まるかも知れないが、だいたいのことはプリセットで賄える。

 さらにNiVEの大きな特徴としては、レンダラがプラグインとして設計されていると言う点がある。これによって、フィニッシュを出力する際にのみ、レンダラプラグインの内部で特殊操作を行うことも「可能っちゃ可能」である。この辺りまでくるとだいぶ敷居の高い話なのだが、それでもその拡張性の豊かさ、良い意味での奔放さはNiVE独自のものであろうと思われる。もっとも、NiVEはオープンソースではなく、無料だがあくまでプロプライエタリ・ソフトウェアであるため、あくまでユーザの範囲で拡張を行える、と言う要素を幅広く取っていると言うことであるが、それが逆にどれだけ便利であるかは、ある程度習熟してくると有難味が非常に分かる。そんなツールである。

 難癖としては、とにかく「学習曲線が最初から急」であること、「まだ不安定である」と言うことだろうか。不安定と言っても、あまり無茶をさせなければちゃんと動く。オブジェクトがコンポジション中に200や300普通に並ぶこともザラだが、それでもスコーンと落ちたり、だんまりこくったりしないところは、だいぶこなれてきた印象がある。あと、32bitOS専用プラグインが多いのも、現状で64bitOSを使用している人間には少し切ないものがある。せめてソースだけでも公開されていればなぁ、と思うことは有るのだが。

 とは言え、Windows環境下に限定して考えればだが、NiVEは非常にハイパフォーマンスである。各種エフェクトのもたらす効果、マテリアルとトランスフォーム、アンカーポイントの意味など、学習すべきことが多々あるが、それだけの成果を得られることは保証できるだろう。

■ Javie

 物凄くざっくりした言い方をするとJavaで作られたNiVEである。
 ただ、Javaで作られていると言うことは畢竟マルチプラットフォームでもある。

 AviUtlもNiVEも、結局Windowsに依拠している。AviUtlは主にWin32APIやDirectXに、NiVEは.net FrameworkやGDI+(標準レンダラにおいて)に依拠している。が、JavieはJavaVMが動作する環境なら、基本マルチプラットフォームである。ゆえにMacでもLinuxでも動くのである。「なんでそんなことが!?」と思うかも知れないが、それはDirectXでもGDI+でもない、業界標準のグラフィックスライブラリ、OpenGLに依拠しているからだ。

 OpenGLはいわゆる緻密な精度のグラフィック描画を要求される、コンピュータグラフィックのプロユースの現場における標準であり、DirectXはあくまでゲーム用のライブラリである。従って、精度はOpenGLのほうが高いのだが、民生品レベルで購入するようなVGAは、まったくOpenGLに対応していないわけではないが、だいたいはDirectXがより高速に動くようにGPUが最適化されている。nVIDIAであればGeForceシリーズなんてのは、だいたいDirectXへの強化がされている。だが、同じnVIDIA製品でもプロユースであるQuadroシリーズはOpenGLに対する最適化が施され、さらにラックマウントユニットとして分散レンダリングを行うインテグレート・システムも販売されている。細かな精度と品質、そして同時に速度を求められる高ポリゴン・高密度テクスチャを要求するような現場のために、OpenGLが存在していると言っても過言ではない。

 そんなわけで、OpenGLに対応するVGAJavaのランタイム環境が有れば、NiVEっぽいモーショングラフィックスツールが動作する。これが、Javieの真骨頂である。もともとJavieを開発されたらくさんPが「MacでもNiVEみたいなのが欲しい」と言う自らの要求を元に制作されていることを考えれば、マルチプラットフォームであることは全く不自然ではない。そればかりか、Javieはオープンソースである。

 らくさんPは元々、数多くの動画制作関連ツールを手掛けていて、アイマス動画に付き物であるいわゆる「抜き」を一発で行うツールの制作などでも名高く、特にアイドルマスター2の発売後に作られた「nukim@s3」は非常に重宝する。ただ、驚くなかれ。

「nukim@s3」は、Javieのプラグインとしても動く。

 先ほどNiVEに付いて触れた際に、カスタムプロパティやエクスプレッション、さらにはプラグインと言った各種拡張方針の多彩さに付いて触れたが、Javieにもそういう側面がある。と言うより、そもそもJavieがオープンソースであることを考慮すれば何も不思議はない。プラグイン、と言う拡張要素が如何に強力なものかわかるだろう。

 さらに、後述するMMDのカメラ軌道データをJavieと相互乗り入れで使うことができる。MMDはAEと連繋するためのツールが、主にMMD側の要請として作られたが、JavieはMMD側の受け口としても機能するのである。もしかしたら今はNiVEでも出来るのかも知れないが、比較的初期にJavieでサポートされてしまったため、もうそれで良いやと言う気分になってしまった。そのくらい、先取的な機能を意欲的に取り込んでいる。

 ただ、最大の難点は、マニュアルらしいものが全くないことだ。

 現状最新が0.5.11と言うこともあり、メジャーバージョンが1になる、つまり正式版になるまでは公式にマニュアルを作る予定がないのかも知れないが、このことは全くの初心者がJavieを利用する上で物凄い障壁になる。もっとも、画面構成や機能そのものは、非常にNiVEに似ているので、先にNiVEを触ってインタフェース的な部分を習得した上で、と言うコースをお勧めする。

 そして、日曜プログラマを含めた、現役プログラマ諸君。Javieは何よりオープンソースだ。Ecripseをさっさとインストールして、矯めつ眇めつソースを追い掛け、どこで何をしているのか、インタフェースは何なのか、そういった解析をしながら自力でソースを追い掛け、画像処理と言うテクニカルな課題に対峙しながら、自分なりのプラグインを構築する、或いは画像処理部分だけ抜き出してバッチ処理的に加工をぶん投げるツールを作るなど、あらゆる可能性がJavieのソースの中には詰まっている。

 そういう可能性は確かにあるが、本線としての「動画をどうこうする」と言う部分に対するフォローはまだ完全であるとは言えない。そう言った意味でも、Javieはまだまだ敷居の高いソフトウェアであると言えよう。

MMD/MME

 MMDとMMEは本来別のものであるが、関連するもの、さらに言えば今や動画制作においては必需品となった感のあるMMEをバラで説明するのもホネであることを考え、一括りにさせていただいている。

 まず、本線であるMMDだ。もう名前もやることも広く知られているだろう。ボーン付きモデルに時間軸からモーションを与え、自在に画面の中でモデルを動かすことができる、まさに夢のようなツールである。基本的な機能解説は書籍でも売られているし、ネット上でも多くの解説記事を目にすることができる。そう言った意味では、これまで述べたツールよりも学習曲線はなだらかである。

 具体的にモーションをどう付ければ良いか、などは既に公開されているモーションを借用して、実際にタイムライン上でどう設定されているのかをつぶさに観察することで、雰囲気を掴むことはできる。また、既に動画媒体として存在するものが有るのなら、それらをトレースすることで新たなモーションを作ることも可能だろう。ただ、作業そのものは比較的単純だが、そのぶん手間は膨大である。だからこそ、秀逸なモーションは珍重されるわけだが、一からモーションを起こして、一通りの動きをさせると言うのは非常に大変な作業である。

 なんとなれば、踊る対象は主にヒトをモデルとしたボーン構成をしているわけで、各種関節の動きを意識して、かつナチュラルに、重心を意識したモーション作りができなければ、どこまで行っても出来るのは「借り物の動き」でしかない。借り物を元に編集するにしても、編集した途端におかしな動きをする、などと言うことは枚挙に暇がないほどである。それだけMMDにおけるモーションと言う問題は、単純でありながら複雑怪奇にして膨大な作業量を要求する。無論、それを乗り越えて完成した暁には、非常に幸福な結末が待っているであろうが、そこまで辿り着く前に倒れ伏した者たちの数を考えれば、どれだけそれが決死の作業であるかは想像に難くない。

 ただ、ツールとしての「お手軽さ」は非常に素晴らしい。取りも直さず3Dレンダラとしての側面も併せ持っているわけで、例えばステージだけMMD上にオブジェクトとして組んで、カメラを動かした状態を記録することで、まずステージを背景として取得でき、さらにカメラ軌道はAEやJavieに取り込むことができる。Javie側では抜いた動画を同一平面として一度配置し、MMDのカメラ画像・カメラ軌道と合成しながら位置合わせをすると言うまぁそっちもそっちで手間は手間だが、と言う処理が可能である。

 もっとも最後に問題になるのは「モデル」なのであるが、これはもうどうしようもない。メタセコイアなどのモデリングツールを使って、現在有るモデルをカスタマイズしていくほうが現実的であろう。ただ、それもやっぱり膨大な手間暇を掛けてようやく辿り着けるのである。公開されているモデルにいちゃもんを付ける前に、自分でそういう作業をしてみれば、彼らがどれだけ苦労してモデルに辿り着いたかが実感できるはずだ。

 次、MME。こちらはいわゆるシェーダをカスタマイズすることで(MMDDirectXベースであることを今思い出した)レンダリングに効果を与える、いわばプラグイン的なものであると考えておいて良い。ただ、シェーダプログラミングができることが大前提だ。正直なところ、今まで述べてきたあらゆるプログラミング要素の中で、もっとも敷居の高いのは、MMEのシェーダである。これを自作するのは「いい勉強」にはなるかも知れないが、さっさと結果が欲しい人間には耐え難い苦痛である。

 そんなわけで、多数公開されているMMEスクリプトから、適宜抜粋して使ってみて「ああ、これなんかいい感じじゃん?」と思えるものを探す、と言うのが初心者ベースでは正しい在り方である。勢いシェーダプログラミングに足を突っ込むくらいなら、そのほうが正しい。もちろん足を突っ込んでも良いのだが、例えば草野球に誘われたら、スポーツ用品店で金属バット買って素振りを始めるか、もっと地味に下半身強化のために走り込みをするかの違いである。どちらかと言えば、金属バット買ったほうが「何となくそれっぽい」ことをしている気になるであろう。つまりは、そういうことだ。

 総じて言うと、MMD/MMEは根本的に3Dグラフィックを理解していないとかなり厳しい。これはMMD/MMEに限らず、例えばモデラーとしてのメタセコイアBlenderにも同様のことが言える。また、理解はしても手数が減らない類の作業になることも多く、当然覚えることも多い。メタセコイアはともかくBlenderのインタフェースの複雑さはもはや戦慄を覚えるレベルである。

AviSynth

 まず最初に、AviSynthそのものは動画編集ツールではない。AVSと呼ばれるスクリプト言語を解釈し、その処理を実行するためのフレームワークサーバであるに過ぎない。

 もっとも、その解釈対象となる言語であるAVSの持っている機能の多くは、AviSynth自身が内包する機能ではあるが、それ以外にも膨大な量の「フィルタ」(AviSynthにおける処理の基準)が公開されており、やろうと思えばかなり多彩な処理は可能だ。

 だが、最大の問題はAVSが書けないと何も出来ないことだ。

 AviSynth自体はフロントエンドを持たない。そのため、フロントエンドとなるアプリケーションが別途必要になる。その最右翼は、国内におけるチュートリアルの先駆けとなったサイトにて紹介されたVirtualDubMod(VirtualDubの修正版)なのだが、これとて決して使い勝手の良いフロントエンド足り得ることはない。また、AviUtlの入力プラグインとしてAviSynthのAVSファイルを扱うことはできるが、結局AVSファイルと言うプログラムを書くと言う作業からは逃れ得ない、と言う問題を抱えている。

 じゃあプログラミングとかに抵抗のない人なら大丈夫だよね、と思うかも知れないが、残念ながらそんなことはない。首尾一貫したプログラム言語に習熟していればしているほど、AVSの荒削りでごっちゃなシンタックスに、げんなりするだけだ。とにかく痒い所はずっと痒いままで、特筆すべきは「データ構造と言う考え方がない」ことだ。そりゃあ確かに動画編集するのにデータ構造もへったくれもねぇだろ、と言うことであれば確かにその通りではあるのだけれど、配列もないのは何とかならなかったのか?(一応外部フィルタとして、AVSに配列を拡張するパッケージがあるが、こいつも正直クソだ)。

 では、なぜ紹介するのか。

 さっきも申し上げた通り、AviSynthはフロントエンドを持たない。AVSと呼ばれるスクリプト言語を介して、与えられた処理を実行するだけのソフトだ。ソフト屋ならこの表現でピンと来るだろうけど、業界関係者以外はどうだろうか。「バッチ処理」をさせるならAviSynthが一番てっとり早いのだ。

 要は、全く同じようなことを手作業で一本一本やるのは、正直ただの苦行なのである。ただの苦行も報われれば良いが、報われないことを何度も何度もやるのは精神衛生上よくない。なので、そういうある意味「編集前の下ごしらえ」のような作業を快適に行うためには、こうした「バッチ処理」に向いている処理系と言うのは非常に有り難いのだ。時間が掛かるようなら、寝る前に走らせておいててめぇは寝てれば良いのだから、まことにコンピュータとして正しい使い方である。

 ついでに言えば、フィルタ自体もC++とWin32APIの習いが有ればできる。ああ、もうそれは完全な障壁だけれどね! 逆に言えば、そこまで分かっている人間が使って真価を発揮するツールだと思って欲しい。確かにその可能性は莫大だが、あまりに莫大過ぎて現在位置を見失わないよう、ツールとしての本質の見極めが必要になってくる、そんなツールである。

 なお、AviUtlと一時期よく比較されていたのは、どちらも基本的に一本のAVIをどうこうするツールであるからだ。AVSは同時に複数枚の動画を扱うことはできるが、それはレイヤーとして時間ごとに可変させたりするような器用なものではなく、単に「オーバーポーズした結果」として、一本の動画に帰着させることしか出来ないため、AviUtlがexeditを得てしまった今となっては、積極的に利用するイメージがわかない。ゆえに、前述したような「バッチ処理」であるとか、自力で積極的にフィルタを書いてカスタマイズしまくるか、そのどちらかである。いずれにせよ、このツールについてはほぼ「初心者お断り」なツールであると言えるだろう。この初心者、と言うのは動画初心者と言うより「コンピュータ初心者」である。

コストというシンプルで難解な壁

・「ラジオdeアイマchu!!」の初の公開録音ということで、横浜は関内までやってきた。横浜駅近辺には仕事で度々訪れることはあっても、関内だの石川町だのと言うとほとんど用事がないので来る事がない。そんなわけで、予定よりも早起きしてしまったのでそのまま昼頃に現場着して、物販で買う物を買い(あの缶バッジの売り方はエグ過ぎる!)、あとは実際にチケットを持っている相方(?)の到着待ちを今している。現在進行形である(笑)

・さて、まぁさすがに時間を余してしまった上に、入ったタリーズの冷房がキンキンで、長くは居られぬとばかりに飛び出したものの、土地勘の全くない場所ゆえ、とりあえずネットカフェを探す目的で馬車道から関内大通りを歩いた。ちょうど馬車道には、神奈川県歴史博物館(だったよな?)というなかなか衒学的趣味をそそられる場所があるのだが、この建物の佇まいたるや。モダニズム様式など吹いて飛びそうな威風堂々としたドイツ近代様式の面構えが、真に素敵である。

・そう思いながら、改めてちんたらと関内の町をぶらぶらと歩くと、ちょうど都内で言えば日本橋近辺に見られるような、近代建築の粋を集めたような芸術性と、構造物としての剛健さを兼ね備えたような門構えを多く見る。そこには「芸術家」の側面を持つ建築家と、職人のプライドを垣間見ることができる。単にハコモノとしてではない、ポストモダンが「脱構築」の名の下に一度切り捨てようとして切り捨てられなかったものが、単純にどうということもなく、長い歴史を潜り抜けたという根拠だけではない説得力を持ち得るものとして、存在している。

・かつて、ナチスドイツにおいてヒトラーが進めていた計画の中に、「ゲルマニア計画」と言う都市の再構築計画が有った。無論、ナチスは最終的にソ連軍にベルリンを陥落されたことで敗北し、計画そのものの全てが実行に移されるわけではなかったが、この計画に参画していた後のナチス政権下において軍需大臣となったアルベルト・シュペーアは、自らの回顧録において「ギリシャ建築のように幾千年以上の時間尺度においてなお、建築としての形を成すもの」を目指したと述べている。なるほど、単に人が住まい働く場所としての建築物以上の芸術性を、建築家が求めることは何も不思議ではないし、その根拠を例えばギリシャなり、かつてのローマ帝国期の建築物なりが近現代においても残されている所以は、そうした芸術性の思想と実現において果たされるものなのであろう。ただ、そこに一つ、現代の商工業の在り方を照らすと、恐らくシュペーアの理想などと言うものは時代遅れと言うより、非現実的でさえある。そこに横たわるのは「コスト」という問題だ。

・戦後、高度成長期から二度のオイルショックを潜り抜け、バブル景気と言う一種の「鬱憤晴らし」のような乱痴気騒ぎの次に待っていたのは「失われた10年」である。その「失われた」期間において、経営者として求められたものは「コストの削減」と言うごくごく当たり前のテーマである。しかしその風潮は、日本国内において割と歪められた形で実現されてきたような気がしてならない。金銭も時間も同様に本来コストで有り得べきものが、単純なキャッシュ・フローに対する支出の抑制という形で実現され、労働者は対時間比に換算しても割の合わない作業を背負わざるを得なくなった。それが全部駄目だと言うつもりはないけれども、「切らなければいけないコスト」と「切っちゃいけないコスト」の違いをどれだけの経営者が理解しているかは、非常に疑問だ。特にそれは、東日本大震災以降さらにおかしな形に歪んでいる。

・そういう風潮の元で、建築家に存分な芸術性を求め、彼らが引いた図面に対して忠実に、どれだけ時間を割いても実現に向けて作業努力をさせるか、と言うある意味難解な問題をシンプルに解決するために、コストという壁を一旦作りこんで、その枠内の論理で片付けようというのが、ごくごく当たり前のこととして横たわっている。それはそれとしても、じゃあ例えば私が建設業に従事する労働者で、残業代とか一切出ないし、納期も決まっているけど、これだけのものは作って貰わないと困る、といわれたときどう反応するかと言えば「それだけの金をくれよ」というだろう。私も結局、コストと言う壁の中で見合う見合わないを考えている。そうなるように、私は仕向けられていたことに気付いて、愕然とする。

・コストという壁は、観測される存在はシンプルであるが、定義は至極難解なのだ。なぜなら、定義をするために必要な「論理」という記号を、コストの壁の内側から見出すことが難しいからだ。一度その壁を越えて、もっと経済というものを客観視できる立場を立脚できない限り、僕たちはずっと、コストという名の壁の中にいて、その向こう側を見ることができるほど達観できていない。がっかりするだろう? でも、それが現実だ。

・横浜は文明開化の玄関口でもあり、西洋文化を受け入れる礎を作った街である。その歴史と伝統を大事に保存し、後世に語り継ぐ必然性を、街そのものが受容している。だが、その「必然性」と言うのは、コストの壁の向こう側にある達観視された感情に依拠している。改めて、敬虔な気持ちにさせられる気がした。

・まっ、そんなこたぁ多分今日の帰りには忘れているけどね! 仁後ちゃん、あっきー、あさぽんに会いに行ってきまっす!(笑) ゲストあずみんだしね!

やっぱ入院なんざするもんじゃないね

・そりゃそうだろ、と誰もが言うだろうが、入院してきた。28日未明に救急車で担ぎ込まれて、29日早朝に退院。1泊2日で35K円(交通費なし)が吹っ飛ぶ高いリゾートと相成った。ぶっちゃけ救急治療が済んだら、ベッド無ぇから帰れと言われると思っていたんだが、残念ながら3,150円/日の差額ベッドが空いていた。そんな始末である。

・とは言え、一通りの緊急治療が済んで発作は一段落してもサチュレーションは92近辺と、相変わらずの低水準。うーん、こりゃ確かに黙ってもう一日ステロイドとネオフィリンぶち込まれるべき状態だなー、と患者歴の長い紗水さんは咄嗟に勘定を済ませた。ただ、29日の朝飯は要らん、と看護師さんに事伝えておいた後、そのままぼんやりとベッドで寝て、朝食の声で起こされた。出てきた飯の量が、一目瞭然で少ない。あとで食器の回収に来た係の方が「どうでしたか?」と訊くので、素直に「もうちょっと、量が……」と言ったところ、昼飯から飯の量が確かに増えた。がっつり満腹感もある。これなら昼寝できる

・が。ヘルシーの極みとも洋風精進料理とも言えるベジタリアン仕様の病院食は、とても胃腸を健やかにするがゆえに消化も早い。目が覚めて時計代わりのテレビを見ると14時。夕飯は18時。眠剤が来るのが22時。圧倒的な「暇」との戦いが始まる。院内売店を覗いたが、糧食に影響するとまずいと思いミネラルウォーターは確保したものの、ボールペンもなけりゃ大学ノートもない。筆記用具の類で有るのは、便箋とレターセットばかりである。縁起でもないことしか思い付かなかったが、そういやここってターミナルケアやってんだよな、と思い出す。うーん。出てちょいと行ったところにコンビニが有るのは知ってるが、左腕静脈にカニューレぶっ刺さったまんまでコンビニなんか行けん。そこで、はたと思い付き病棟のナースステーションに飛び込む。

「コピーの裏紙とボールペンないですかっ!?」

・……きょとんとした顔の看護師さんを尻目に、裏紙を10枚程いただき、ボールペンをお借りする。よしよし、これで暇が潰せる。とは言っても裏紙10枚分まで。それ以上は余裕がない。今、俺の目の前に有るのは、たったA4で10枚だけのスペースなのだ、と思うと、もうそれだけで色々と思い付く。もっとも、相変わらず字を書くのは不自由なので主に図。それとアルファベット。画数の多い漢字と違って、割とアルファベットは書きやすい。筆記体とブロック体の中間みたいなテキトーな書き方ではあるが。

・そうやって暇を潰しているうちに夕食が来て、10枚目の余白が埋まってしまった辺りでテレビを見た。あー、世界陸上ってもうやってんだっけなと思いつつ、織田裕二フリーダムだなーと思いつつ、ボルト選手のフライングに溜息を漏らしている間に点滴の交換が有って、看護師さんに「ボルトがフライングで失格になっちゃってね」などと話したら「えっ、そうなんですか!?」と素の声で言う。そうか、こんな大変なお仕事だと俺ら入院患者と違ってそんな自由もねぇんだな、そんでもって俺らはそんな彼女らに助けられて生きてんだなと思うと、申し訳ないね、と心の中で思う。改めて流れこむ点滴の冷たさも手伝って。

・22時の消灯の直前には、所望した通りの眠剤が処方され安眠。6時起床時(実は起こされた)のサチュレーションは96。まぁ、ギリギリだ。用度掛に精算誓約書(要するに「今カネ持ってねぇから、ツケにしておくんな!」と頼む紙)を書いて、無事退院。朝の通勤時間帯の最中、フラフラと自宅へと戻り、29日は何事もなかったように出勤した、と言うのが顛末である。まぁやっぱ、入院なんざするもんじゃねぇ。

・ただ、残された10枚の裏紙を、時折眺める。ところどころで「何が書きたかったんだ? なぁ、俺」と聞きたくなるところも有ったが、いろんなところから借りて継いで剥いで作られたような「世界観」を眺めている。眺めながら、こう思うのだ。確かに俺には、物書きの才能もなけりゃ動画のセンスもねぇ。他人と比べていたら、そんなものはいつまで経っても見つかるわけがねぇ。だからもう、良いんじゃねぇの? 褒められも貶されもせず、って宮沢賢治じゃねぇけどさ。もう、目指すところなんて「自分史上最高傑作」で良いじゃん。人から見たら何も違わない為体であっても、んなこと気にしてっから何にもできねぇんじゃん。そう、思った。

・「お前の人生、あと裏紙何枚分かわかんねぇんだぜ?」と、言われているような気がしたからかも知れん。

あっついわ……これが日本の夏か……

金鳥の夏、日本の夏(ぉ

・そんなわけで8月も予想通り忙しく、やっとそこそこカンが戻ってきたとは言え、まだまだ若い連中より手が遅く、しかも担当タスクがどうしてもテストに時間を要するタスクなので、土曜日に休日出勤をしてフォローせざるを得なかった。やむを得ぬ。

・で、本日。行って参りました、コミックマーケット80、3日目! いやー、なんか7時くらいにトイレに起きたんだけど、それっきり寝付けなくて「いいやもう、ATM開いたら金下ろして直行だ!」とばかりに、ちょっと気分的に凹む市ヶ谷→豊洲→国際展示場正門と言うある意味「裏ルート」でビッグサイトへ。時間は10時ちょっと前なので、一般参加者の最後尾に取り付く前に列はゆるゆると動いて行くだろうと思っていたのだが、ちょうどIDC大塚家具ショールーム(あそこもあそこで馬鹿でけぇよな!)をぐるりと囲う様に誘導されて、りんかい線組と途中合流したり、横断歩道で止められたり、そもそも入り口が狭い分だけボトルネックになりやすいので、ちょっと動いて止まり、ちょっと動いて止まるの繰り返し。ああ、そうだそうだ。こんなもんだったよ、一般入場は。もっとも俺が知ってんのは晴海の時代のことだけどな。

・とは言え、1時間は覚悟していた炎天下の行列待ちは30分で解消。ただ、館内に入れば当然そこかしこに点在するボトルネックに詰まって、お目当てのアイドルマスター関連のある東4ホールまでさらに10分。それでも、入ったときはエントランスもガレリアもそんなにクソ暑くはなかったのは幸いである。この程度の暑さで悲鳴を上げるほど、団塊ジュニア世代はヤワじゃねぇんだぜ?(ぇ

・さて、アイマス島に到着して真っ先に向かったのは、シナモンPの設計による電池式LEDサイリウム「シナモンブレード2」。ある意味、買い物の側面としてはこれが最大の山場であり、クソ暑い中に外で行列作って待たされる覚悟を決めてまで午前中に行った最大の理由である。さすがに開場から40分程度では在庫は豊富。無事「シナモンブレード2」をゲットして、あとはPCメールで携帯に向かって送ったサークルリストの順に訪ね歩く。大半は会ったことがあるPさんのサークルや、Twitterで交流のあるPさんのサークルを回りつつ、途中で表紙に目が止まった本を「表紙買い」してみたり。なんだかんだで2万円が財布から羽生えて飛んで行ったが、充実した買い物と交流ができ、個人的には大変実りある夏コミであった、などと。

・てぇか、シナブレ2入手したんだからライブで使わなかったら勿体無い! 来年の周年ライブは、何が何でも捩じ込んでもらうぜっ!(ぉ

痛恨の一撃

・スーパーでYシャツを3枚ほど補充した。ジャケットを着なくなったので、見た目に分かりやすく色物を入れて行こうと思って、適当に買ったら1枚半袖が出てきた

・半袖のワイシャツなんか何年着てなかったか、思い出せもしない。少なくとも会社に入ってずっとここまで、半袖ワイシャツなるものを買ったことも着たこともなかったのだから。ああ、中学の夏服で着てたくらいか。だが社会人になってからは、通年で長袖でオフィスでは簡単に袖をたくし上げて七分袖っぽく着る程度なのが普通だったし、そもそも売場に締める半袖の割合が馬鹿高くなりすぎだ。長袖を探すほうが苦労する上に、長袖が高い! そりゃついつい1,480円の半袖買うよね! いや、俺広げるまで半袖だって気付かなかったけど!

・で、なんでこんなにクダを巻いてるのかと言うのは、半袖ワイシャツは逃げ場を奪われていると感ずるからだ。いや、ワイシャツの逃げ場ってなんだよ、って言われちゃうとどうしようもないけど、電車に乗った時に異様に冷房効きまくっててさすがに寒い、と思っても長袖ならたくし上げた袖を戻せばいい。それでいくらか冷房の恩恵に純粋にありつける。だが、半袖で乗車すると完璧に逃げ場は弱冷房車だけになる。それがイヤなのだ。申し訳程度に送風されてくるだけの弱冷房車も御免だが、半袖で電車乗ってパワフルに冷房効きまくってて、ほーらみろやっぱり腹下したよ!(知らんがな)

・んなわけで、今度からよーっく注意して長袖か半袖かを見極めて……とか言う前に紳士服屋に行くべきだった、と後の祭り。

設定練って遊んでるうちは楽しいけどな

・実際に文字に起こそうとすると、結構脳味噌使うんだよこれが(ぉ

・と言うわけで、最近全然原稿の手合いが進まない。仕事が忙しいのは分かって入った現場なので文句を言うつもりはないが、なかなかに厳しいのは厳しいのだ。体が自然に慣れてくるようになれば心配は要らないが、せめて月曜からは23時まで粘って一日の作業量を増やすしか無い。いつものように小手先で交わせるフェーズではなく、成果物は純粋にファイルと言う形で示される。プログラムと言う形で起動される。だからこそ、余計な後手を踏まないプログラミングをしなきゃいけない。冷静に、しかし熱く。

・そんなことをしていると、何かをアウトプットすると言う行為そのものに、抵抗感を覚えるようになるのだ。やんなきゃいけないのかー、と自分に枷を嵌めたがるタイプの人間ゆえ、逃げられるものからは逃げたいし、別に俺が動画作らなくても、二次小説書かなくても、誰も困りはしない。ただ単に、去る者は日々に疎しで忘れ去られて行くだけだ。

Amazonの荷物は正午ちょい過ぎに来た。うむ、早くも遅くもないこの時間ってのはさすがやねヤマト(関係ない)。井上堅二の文庫本は通勤電車で読もうと思う。PL/SQLの本は会社に放置していこう。